年の瀬を背にして

年の瀬の「瀬」とは、「川の流れが早いところ」という意味だそうです。
年末は忙しく、時の流れが早いことからそう呼ぶようになったとか、なってないとか。

年の瀬を背にして2020の陽を見つめています。
2019から連れてきた哀しみや愛しみの手を取って、年の瀬に背を向けています。

背中合わせの年の瀬。
そこから2019のせせらぎが聴こえてきます。
(仲保作品達)

色々あったでは済まされないくらい色々ありました。2作上演し、3作目を稽古中。仲保作品以外も二本。演劇以外の事でも色々ありました。

2019のせせらぎがおよそ「せせらぎ」と呼べないほど急速に音を立ててきました。
いよいよ「年の瀬」に流れゆくのでしょう。

「ありがとう」を色々な人に言わなきゃいけない年になりました。今まで以上にそんな一年でした。
ハタチの皆んな、コドレムの皆んな、アルスゼロの皆んな、それ以外でご一緒した皆様、別にご一緒はしてない皆様。

ありがとうございました。

年の瀬を背にして。
一歩踏み出せば2020の陽が待っています。
2020の陽はアルスの火。燃えても焼けないセントエルモの火。
2020は、2/22-23の舞台で私の物語を終わらせないことを目標にやっていきます。

面白い作品にします。
心の底から信頼できる作品にします。
心の底から言葉を吐き出して作品にします。
どうか見に来てください。

それでは良いお年を。 仲保樹でした。
(仲保樹)
——「アルスの果てまで、一緒に行きませんか?」
光る見えない楽器の行進はそう言って、不可視の旋律を奏でました。男は、身体じゅうが不思議な感覚に襲われました。
あたたかいようでつめたいような、力がみなぎるようで力が抜けるような、嬉しいようで悲しいような。
「なにを、一体なにをしたんです」
「フィリアルス……その力をキミにあげたんだ。フィリアとは愛。アルスとは芸術」
男は途端に黙りこくってしまいました。自分にはその言葉が似つかわしくないと思ったからです。やがて尋ねます。
「だからどうして僕なんかに!」
すると、男は、楽団の楽器達がこう歌うのを聴きました。
「だって、キミはそれが好きみたいだから」
光る見えない楽器を打ち鳴らすその行進は、年の瀬を背にして、新しい方向へ流れていきました。
男は、その後を追うことはせず、ただ、先程の感覚を忘れないようにしました。
「今年も終わるなぁ」なんて言いながら。
(フィリアルスの物語.3)

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