来週の今頃には
来週の今頃には、舞台の天井に吊り下げたライトを地面へと降り立たせているだろう。ライトは鈍い熱を持ったままで、今作の成功体験なり失敗談なり、そういうものの温度を身体で示しているのだろう。
来週の今頃には、役者達は役の殻を抜けて元の人間に戻っていくのだろう。衣装とメイクは呪術的な道具であって、人を変身させるものだから、それから解放されて初めて、役者達は日常を生きるヒト科になるのだろう。
来週の今頃には、私は何を考えているのだろう。もう二度と演劇はやるまいだとか、もう一度演劇をやりたいだとか、今度は舞台に立ちたいだとか、一体どう思っているのだろう。
既に両の手で抱えきれないほどの反省を抱えている。人に助けられて、同時に呆れられて、そうやって紡いできたこの三ヶ月余り。
今公演は、私にとって何か重要な意味を孕んだ公演となるに相違ない。明日への道標となることを望んでいる。この物語を墓標にして旅立つ者に背を向けること勿れと言い聞かせ、風に舞う花弁を目印に歩き出す。
来週の今頃には、きっと全てが終わっていて、そして新たな芽が、本当に小さな芽がそっと生まれていることだろう。
(仲保樹)
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